近年、ビタミンDについて様々な研究結果が報告され、世界的にも注目を集めています。2023年、東京のある医科大学の研究チームの検証によると、東京都内で健康診断を受けた5518人を調査したところ「98%がビタミンD不足」に該当していたという結果が出たそうです。他の栄養素と違って日常的にビタミンDを意識する生活はしていないかもしれませんね。ビタミンDとは、どんな栄養素なのでしょうか?
ビタミンDは、D2~D7の6種類
ビタミンDは6種類ありますが、一般的には生理活性が高い(身体の機能や組織に対して反応が良い)D2とD3に大別されます。D2はシイタケなどのキノコ類に多く含まれています。D3は魚貝類や卵に多く、主に紫外線を浴びることで皮膚から合成されます。ほ乳動物ではどちらもほぼ同等に効力を持っているので、通常、両者を総称してビタミンDと呼んでいます。(図①)
ビタミンDの主な作用
①「骨を丈夫にする」
ビタミンDは「カルシウムが小腸で吸収されるのを助ける」また「血液中のカルシウムが骨に沈着するのを助ける」などの働きがあります。なので、カルシウムを摂っていてもビタミンDが不足すると骨が弱くなってしまいます。小児では「くる病」や、高齢者では「骨粗しょう症」になりやすく「骨折」による寝たきりのリスクが高くなります。
現在、日本では骨粗しょう症の患者は1590万人と推定され、大腿骨を骨折した高齢者の5人にひとりは1年以内に亡くなるというデータもあるそうです。日本人女性1088人の血中ビタミンD濃度を測定した結果、全体では86・3%特に40代の女性は94・2%が不足していたとのデータもあります。(グラフ①)
②「筋肉を強くする」
筋肉は合成と分解が繰り返されているので継続的にタンパク質を摂る必要がありますが、カルシウムは筋肉の合成を促す作用があり、ビタミンDはカルシウムの吸収を促進するので筋力維持にも深く関わっていると言えます。運動後の筋肉修復や再生が早まるという情報からビタミンD摂取を心掛けているアスリートもいるようです。
筋力が衰えてしまうと、将来のサルコペニアの問題も出てきて転倒のリスクも高まります。予防のためには外に出たり運動したりすることはもちろんですが、高齢者は特に栄養摂取の偏りなどにも気をつけたいところです。(グラフ②)
ビタミンDが不足している理由は「現代の生活」にもあると言われています。ビタミンDは食物摂取の他に日光を浴びることで皮膚からも作られるのですが、ヒトは服を着用し室内での生活が中心になりました。美容の観点からはシワやシミまた「皮膚がん」のリスクも含め日光に当たることは避けるべき事という傾向にあります。日焼け止めを塗ることも日常的になりましたが、極端にならない方がよいのかもしれませんね。
次回は、ビタミンDの幅広い働きと食事面からもう少し考えてみたいと思います。
《参考文献》
・ビタミンDの働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp) https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-d.html
・公益社団法人ビタミン・バイオファクター協会 (vita-bio.org) https://vita-bio.org/whats-v-d.html
・ビタミンDはどんなビタミン?| 分子生理化学研究所 (mpc-lab.com) https://www.mpc-lab.com/blog/20200501
・数字でみる骨粗しょう症 (jpof.or.jp) https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/tabid265.html
・「栄養素の通になる」第3版 上西一弘 著 女子栄養大学出版部
・「日本人のための科学的に正しい食事術」 西沢邦浩 著 三笠書房
・「ビタミン・ミネラルのとり方」 福井透 著 丸善出版
文/野菜ソムリエ上級プロ 福田ひろみさん(東京在住)
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