私の故郷である栃木県の南東部には、国内シェア90%を超える特産品の生産地があります。その特産品とは、ユウガオの果肉をひも状に剥いて、天日で乾燥させた伝統的な保存食のひとつ、干瓢(かんぴょう)です。
ユウガオの歴史は古く、縄文時代や弥生時代の遺跡からも種子が出土されていますが、干瓢として加工され始めた時期はよくわかっていません。歌川広重の東海道五十三次の水口宿(滋賀県甲賀市)の絵には干瓢を干す姿が描かれています。江戸時代中期、幕府により水口城主が栃木の壬生(みぶ)城主に任命されましたが、その頃栃木(壬生城)あたりには、何も生産物がありませんでした。そこで、水口からユウガオの種を取り寄せて栽培したところ、土壌や気候などが適していたため栽培に成功し、現在の栃木県の特産品である干瓢へと至ったのです。
ユウガオはその名の通り夕方に白い花を開き、朝方にはしぼんでしまいます。花が終わると30日ほどで実が大きく生長し、皮が固くなる前の夏の暑い時期に収穫します。果実は長楕円形から丸い球形の物まであり、薄い緑色をしています。「しもつけしろ」「しもつけあお」という専用品種もあります。未熟果は煮物や漬物、汁物の具材にもできますが、ほとんどは干瓢にされます。
干瓢を作るには太陽の光を十分に当てる必要があります。ユウガオを午前3時〜7時までに、玉剥き機で幅3㎝厚さ3㎜長さ2mほどに剥いていくのですが、この作業には熟練の技が必要で、習得するのに約10年かかるそうです。天気が良ければ、2〜3日天日干しをした後、害虫の繁殖や変色防止のため硫黄で燻煙します。硫黄は水に溶けやすいので、よく水洗いをしたり、茹でたりすれば、安心して召し上がっていただけます。
干瓢自体にはあまり味がない為、どんな食材と一緒に調理してもよく合います。すぐに思い浮かぶ干瓢料理は、甘辛い味が酢飯とよく合うかんぴょう巻(写真①)です。太巻きやちらしずしの具としても大活躍します。私の祖母は、よく薄味の卵とじ(写真②)を作ってくれました。お酢とも相性が良いので、中華サラダ(写真③)にもオススメです。膨潤性もあるので、ダイエットにも効果があるかもしれませんね。
栄養価は、切干大根よりも食物繊維が多く、野菜類の中では群を抜いています。茹でてしまうと⅕に減ってしまいますが、それでも茹でたゴボウに匹敵する程で、食物繊維の含有量はかなり優秀です。干瓢の調理には、下準備が必要で面倒だと思われるかもしれませんが、乾物類をうまく使いこなせるようになると、一人前の主婦と言えるかも知れませんね。
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【かんぴょう巻き】
戻した干瓢を好みの柔らかさになるまで茹で、甘辛く味付けをしたら、酢飯と一緒に海苔で巻く。
【かんぴょうの卵とじ】
戻した干瓢をカツオ出汁で煮込み、ニンジンの千切りを加え醤油とみりんで味付けをする。溶き卵を加えたらすばやく器に移し、刻み海苔をのせる。
【かんぴょう中華風サラダ】
茹でた干瓢の水気を切り、3㎝位に切り揃える。そこにキュウリとツナ缶を加え、甘めの中華だれで和える。
文/野菜ソムリエ上級プロ 福田ひろみさん(東京在住)
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